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社会保険労務士<事務所通信’20/9月>

社会福祉施設、陸上貨物運送事業における労災防止について

◆社会福祉施設&陸上貨物運送事業の労災

防止に向けた通達が発出
厚生労働省から、次の2つの通達が公表されました。

・社会福祉施設における労働災害防止に向けたより一層の取組について(令和2年7月28 日基安発0728 第1号)

・陸上貨物運送事業における労働災害防止に向けた一層の取組について(令和2年8月3日基安発0803 第2 号)

通達では、令和元年の社会福祉施設における休業4日以上の死傷者数は10,045 件(前年比5.2%増)と急増していることや、陸上貨物運送事業においては前年より2.8%減少したものの、平成29 年度比で4.6%増加していることなどから、労働災害防止に向けて、重点的に取り組む必要があるとしています。

◆労働災害の特徴

社会福祉施設では、腰痛等の「動作の反動・無理な動作」と「転倒」による死傷災害が多く、特に「動作の反動・無理な動作」は、社会福祉施設における死傷災害の約3割をしめ、他業種と比較しても災害件数が多い傾向にあります。また、施設利用者の送迎時の交通事故も社会福祉施設での特有の事故です。
陸上貨物運送事業における労働災害については、荷役作業時における労働災害が全体の約7割を占めており、荷役作業時の労働災害では特に荷台からの転落が多く、うちトラック荷台等への昇降時に発生するものがその約4割を占めています。

◆労働災害防止対策で活用したいリーフレットや資料

通達では、社会福祉施設、陸上貨物運送事業の労災の特徴を踏まえ、次の資料等を利用し、関係者団体に対して、積極的な周知・指導に取り組むようにとしています。

【社会福祉施設】
・「職場の危険の見える化(小売業、飲食業、社会福祉施設)実践マニュアル」労働災害防止対策の有効なツールの1つとして「職場の危険の見える化」がありますが、本マニュアルでは、例えば、介助の伴う「腰痛予防や」「転倒予防」の見える化の例として、福祉用具(機器・道具)を活用した腰痛予防や、施設利用者の送迎時の交通事故防止のための交通ヒヤリマップの作成など、イラスト入りでわかりやすく紹介されています。その他、「職場における腰痛予防対策指針」や「エイジフレンドリー補助金」「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」なども紹介されています。

【陸上貨物運送事業】
・「陸上貨物運送事業におけるトラック荷台からの転落を防ぐために 荷台昇降設備・装備はありますか?」(リーフレット)
トラック荷台への昇降時の労働災害を防ぐための最新の安全対策とともに、転落防止に役立つチェックポイントが紹介されています。
また、「労働災害が増えています。荷物の積み降ろしを安全に」(リーフレット)では、荷役作業時の死亡災害にみる災害パターン別の原因と対策が紹介され、参考になります。

コロナ問題影響下における人材派遣をめぐる最新動向

◆新型コロナウイルス感染症に起因する非正規雇用への影響

厚生労働省によれば、7月31 日集計分の解雇等見込み労働者数のうち非正規雇用労働者数(パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託等)は16,342 人です。5月25 日の集計分2,366 人と比較すると約7倍で、13,976 人増加しています。
非正規雇用労働者以外の解雇等見込み労働者数が、7月31 日集計分41,391 人、5月25日集計分16,723 人で24,668 人増と約2.5 倍であるのに比べると、割合としては非正規雇用労働者のほうが増えています。

◆厚生労働省も派遣労働者の雇止め問題を注視

リーマンショック時の派遣労働者の雇止め問題を受け、厚生労働省ではコロナ問題発生後、労使団体や派遣業界に対して雇用維持を図るよう、度々要請しています。
7月31 日の加藤厚生労働大臣の記者会見では、派遣契約更新の多かった6月末時点では派遣契約の継続や新たな派遣先確保により、基本的に維持ができているという認識が示されました。
一方、9月の更新時期を迎えるにあたっては、都道府県労働局において、雇止め等があれば、雇用安定措置の適切な履行あるいは雇用調整助成金の活用による雇用維持等、必要な指導を徹底的に行いたいとしています。すでに、各労働局に対して雇用維持に係る要請をさらに徹底していくよう指示を行い、製造系派遣を行う派遣元に対しては、中途解除等の状況把握および雇用安定措置等に係る指導監督を集中的に実施するよう、指示したとのことです。

◆令和3年度の同種業務に従事する一般労働

者の賃金額の公表時期は延期企業規模にかかわらず、派遣労働者については、今年4月1日よりいわゆる同一労働同一賃金が求められています。
派遣労働者の待遇決定にあたり、労使協定方式を採用している場合、派遣元は派遣労働者の待遇を「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」(以下、「一般労働者の賃金水準」という)と同等以上になるように、労使協定で定めることとなります。
この一般労働者の賃金水準は、前年または前年度の統計調査等を活用し、毎年6~7月に示すこととされていますが、7月29 日、令和3年度分の公表を延期し、秋を目途に公表予定であることが明らかにされました延期理由には、コロナ問題による雇用・経済への影響の先行き不透明を挙げています。
令和3年度に向けた派遣元と派遣先との契約交渉は本年末頃から開始されるとみられますが、今後の動向に注意しておく必要があります。

8月1日から雇用保険の基本手当日額が変更になっています

◆「基本手当日額」の変更

雇用保険の基本手当日額が、令和元年度の平均給与額が平成30 年度と比べて約0.49%上昇したことおよび最低賃金日額の適用に伴い変更されています。
なお、平均給与額については、「毎月勤労統計調査」による毎月決まって支給する給与の平均額(再集計値として公表されているもの)が用いられています。

◆具体的な変更内容

1 基本手当日額の最高額の引上げ
基本手当日額の最高額は、年齢ごとに以下のようになります。
(1) 60 歳以上65 歳未満 7,150 円 →7,186 円(+36 円)
(2) 45 歳以上60 歳未満 8,330 円 →8,370 円(+40 円)
(3) 30 歳以上45 歳未満 7,570 円 →7,605 円(+35 円)
(4) 30 歳未満 6,815 円 → 6,850円(+35 円)
2 基本手当日額の最低額の引上げ
2,000 円 → 2,059 円(+59 円)
※ 基本手当日額の算定基礎となる賃金日額の最高額、最低額等については、毎年度の平均給与額の変動に応じて変更されていますが、これにより変更された最低額が、最低賃金日額(地域別最低賃金の全国加重平均額に20を乗じて7で除して得た額)を下回る場合は、最低賃金日額を最低額とすることとされています(雇用保険法第18 条第3項)。
令和2年8月1日以降の基本手当日額の最低額については、最低賃金日額に、基本手当の給付率80%を乗じて計算されています。
(計算式)
901 円(令和2年4月1日時点での地域別最低賃金の全国加重平均額)×20÷7×0.8=2,059 円
*変更の詳細については厚生労働省のパンフレットをご確認ください。
【厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」PDF】
https://www.mhlw.go.jp/content/11607000/000654410.pdf

9 月の税務と労務の手続提出期限
[提出先・納付先]
10 日
○ 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>
[公共職業安定所]
30 日
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
○ 健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]
○ 労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
○ 外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>
[公共職業安定所]

当事務所よりひと言
今年はコロナ禍の中、学校をはじめ短い夏休みの方が多かったと思いますが、いかがお過ごしでしたでしょうか。
弊所も交代で取得できるときに取得する形に致しました。どこにも行けない夏でしたので、家や実家の片付けを行いました。不要な書籍・CD・DVD や子どもの頃集めていた切手・テレカなどが出てきたので、不要品としてまとめて売却したところちょっとした小遣いになりました。皆様の家庭にもお宝が眠っているかも知れませんね。
年初に担当した際にはいよいよオリンピックイヤーの幕開けとお伝えしましたが、コロナでそれどころでは無くなってしまいました。徐々に正常活動になっているクライアント様が多いと思いますが、この暑さの中一番気をつけていただきたいのが、労災事故です。今号巻頭で業種を絞って取り上げましたが、皆様もお気を付けください。
(今号の担当:田中 穣)

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